「暦年贈与の非課税枠110万円」を毎年活用して、計画的に資産を承継する。これは非常に有効な節税策です。しかし、そのやり方を間違えると、税務署から「定期贈与」とみなされ、最悪の場合、初年度に全額に対して高額な贈与税が一括で課税されるリスクがあることをご存知でしょうか?
「毎年同じ時期に、同じ金額をあげているだけなのに?」と驚かれるかもしれません。特に事業承継を控える経営者や、資産の組み換えを考える個人事業主の方にとって、この落とし穴は致命傷になりかねません。今回は、この「定期贈与」のリスクとその回避策を具体的に解説していきます。
「定期贈与」と「連年贈与」はココが違う!
「定期贈与」と「連年贈与」は、見た目は同じ「毎年お金をあげる行為」ですが、税法上の扱いが全く異なります。
贈与開始時点(初年度)で、「今後10年間で合計1,100万円を贈与する」といったように、総額と期間について合意が成立していると見なされるもの。この場合、初年度に総額1,100万円に対して贈与税が課税されます。
一方、「連年贈与(セーフ!)」とは、毎年その都度、改めて贈与の意思を確認し、新たな契約に基づいて実行するものです。この形であれば、毎年110万円以下の贈与は非課税となります。
税務署が判断する決め手は、「最初に総額の約束があったかどうか」です。この違いを図で確認してみましょう。
税務調査でこう見抜かれる!具体的なケーススタディ
「総額の約束なんて口で言っただけ、証拠はないはず」と思われるかもしれません。しかし、税務調査では通帳の動きや家族間のやり取りから総合的に判断されます。特に、贈与契約書がない場合や、金額・時期が毎年完全に同じ場合は、定期贈与と認定されやすいのです。
令和の税制改正で「生前贈与」はさらに計画性が重要に
ご存知の通り、生前贈与を取り巻く環境は年々厳しくなっています。特に2024年(令和6年)以降の税制改正で、相続開始前の贈与を相続財産に加算する期間(贈与の持ち戻し期間)が3年から7年に延長されました。
これはつまり、生前贈与を始めるのが遅れると、その分、節税効果が得られにくくなるということです。改正の全体像を考慮すると、より早期から、そしてより**「定期贈与」と認定されないための確実な対策**を講じていく必要性が増していると言えます。
定期贈与リスクをゼロにする「3つの実務鉄則」
このリスクを回避し、正しく連年贈与を行うための実務上の鉄則は以下の3つです。
- 鉄則1:毎年、必ず「その都度」の贈与契約書を作成・保管する。
- 鉄則2:贈与の実行は、振込で行う(証拠を残すため)。
- 鉄則3:毎年贈与する金額や時期をあえて変える(例:110万円、105万円、108万円など。時期も1月、3月、12月など分散)。
1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計額が対象となる制度です。この合計額から基礎控除額の110万円を控除(差し引く)できるため、110万円以下の贈与であれば贈与税の申告も納税も不要となります。
「親から子へ」「経営者から後継者へ」大切な資産をスムーズに渡すためにも、贈与の「手続き」は命綱です。「やったつもり」で将来的に追徴課税(税務署が後から不足分の税金を課すこと)を受けることのないよう、私たち専門家と一緒に、確実で元気な資産承継計画を進めていきましょう!