税務お役立ち情報・コラム

Column

「AIに確定申告させてみた」は通用する?
税理士が検証するChatGPT vs 税務署のリアル

生成AIの進化が止まりません。「もう税理士なんていらないのでは?」という声も聞こえてきますが、結論から申し上げます。現時点での「AIへの確定申告丸投げ」は、税務調査での爆死リスクを高める危険な行為です。

確かにAIは優秀です。しかし、税務の世界にはAIが最も苦手とする「文脈」と「責任」の壁が存在します。今回は、流行りの「AI確定申告」のリアルな実力と、経営者が陥りがちな落とし穴について、現場の視点から検証します。

「レシート画像を読み込ませて終わり!」の幻想

ChatGPTなどのAIに領収書の画像を読み込ませ、「これを仕訳して」と指示すれば、確かにそれっぽい回答が返ってきます。一見、完璧に見えるその作業。しかし、そこにはプロなら絶対に見逃さない致命的なミスが潜んでいることが多いのです。

Aさん
先生! AIに去年の領収書データを全部食わせたら、一瞬で申告書の下書きができましたよ! これでもう顧問料いらないですね(笑)

おっと、ちょっと待ってください! そのAI、家族とのディズニーランド旅行を「研修費」にしてませんか? それ、税務調査で一発アウトですよ!
税理士

Aさん
えっ、でもAIが「経費にできる可能性があります」って言ってたんですけど…。

AIは「可能性」は示せても、それが「事業に必要か」という事実認定まではできません。もし否認されても、AIは追徴税額を払ってくれませんからね。
税理士

AIが犯す「もっともらしい嘘」

AIを使う上で最も警戒すべきなのが、「ハルシネーション」と呼ばれる現象です。

【専門用語解説:ハルシネーション(幻覚)】

生成AIが、事実とは異なる情報を、さも真実であるかのように自信満々に回答する現象のこと。税務相談においては、存在しない法律や、すでに廃止された制度を根拠にアドバイスをしてくるケースが確認されています。

例えば、「インボイス制度の経過措置」や「定額減税」といった、最新かつ複雑なトピックについてAIに尋ねると、2年前の古い情報を元に回答したり、架空の特例をでっち上げたりすることが頻繁にあります。

税務署に対して「AIがこう言ったから大丈夫だと思いました」という言い訳は、1ミリも通用しません。申告書にハンコを押す(送信する)のは、あくまであなた自身だからです。

AIに「できること」と「できないこと」

では、AIは全く使えないのでしょうか? いえ、そんなことはありません。使いどころさえ間違えなければ、最強のパートナーになります。

  • 〇 得意:勘定科目のアイデア出し(「ガソリン代は何費?」→「車両費や旅費交通費です」)
  • 〇 得意:Excel関数の作成や、日報からの要約
  • × 苦手:個別の事情(文脈)を汲み取った経費判断
  • × 苦手:最新の税制改正へのリアルタイムな対応

賢く使いこなすための「3つの鉄則」

テクノロジーを味方につけつつ、大火傷しないためのポイントをまとめます。

1. 「ファクトチェック」を必ず行う

AIの回答は「あくまで参考意見」として扱いましょう。特に税額控除や特例措置など、お金に直結する部分は、必ず国税庁のサイトや専門家の記事で裏取りをするクセをつけてください。

2. 個人情報・機密情報は入力しない

多くの無料AIサービスでは、入力したデータが学習に使われる可能性があります。取引先の名称や具体的な金額、マイナンバーなどが含まれる詳細なデータをそのままAIに放り込むのは、情報漏洩のリスクがあります。

3. 最終的な「判断」は人間がする

「これを経費に入れるか?」「この特例を使うか?」という最終決定は、経営判断そのものです。AIは選択肢をくれますが、責任は取ってくれません。迷ったときは、私たち専門家を「答え合わせ」に使ってください。

AI時代だからこそ、重要になるのは「問いを立てる力」と「真偽を見極める目」です。便利なツールは使い倒しつつ、守るべきところは泥臭く守る。それが、賢い経営者のスタイルです。

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