経営者や個人事業主の皆さん、あなたが毎月支払っているその「外注費」、税務署に胸を張って説明できますか?もし税務調査で「これは外注費ではなく給与(給料)ですね」と指摘されたら、過去数年分に及ぶ莫大な追徴税額が発生し、資金繰りが一気にショートする危険性があります。
なぜ「外注費」と「給与」の区分がこれほど重要なのか?そして、どうすればそのリスクを回避できるのか?今日はその境界線をズバリ解説します。
なぜ「給与」と「外注費」で天国と地獄ほど違うのか?
「払う金額は同じなんだから、どっちでもいいじゃないか」と思われるかもしれません。しかし、税務上の取り扱いは全く異なります。ポイントは「消費税」と「源泉徴収」の2点です。
事業者が納める消費税は、「売上で預かった消費税」から「経費で支払った消費税」を差し引いて計算します。これを仕入税額控除といいます。経費に消費税が含まれていれば、その分だけ納める税金が安くなります。
外注費として処理できれば、支払った金額には消費税が含まれているとみなされ、納める消費税を減らすことができます。さらに、源泉所得税を預かる必要も(原則として)ありません。
一方、給与の場合、消費税はかかりません(不課税)。つまり、消費税を減らす効果がゼロになります。さらに、支払う側には源泉所得税を天引きして国に納める義務が発生します。
もし否認されたら…恐怖の「往復ビンタ」
税務調査で「外注費」が否認され「給与」と認定されると、どうなるか。これが本当に怖いんです。
- 消費税の追徴:外注費として差し引いていた消費税分がすべて否認され、その分を追加で支払う必要があります。
- 源泉所得税の追徴:本来、給与から天引きしておくべきだった所得税を、会社が代わりに納めなければなりません(後で本人に請求するのは困難です)。
- ペナルティ:さらに延滞税や過少申告加算税が上乗せされます。
過去3年〜5年分遡って指摘されると、数百万円、規模によっては数千万円単位のキャッシュが一気に出ていくことになります。まさに「往復ビンタ」で会社が傾くレベルの衝撃です。
税務署は見逃さない!「実質判定」のポイント
契約書のタイトルが「業務委託契約書」になっていればOK、ではありません。税務署はあくまで「実態」を見ます。以下のポイントをチェックしてみてください。
1. 指揮監督を受けているか?
業務の進め方や作業時間について、発注者から細かい指示や命令を受けている場合は「給与」の性質が強くなります。外注なら、ある程度自分の裁量で仕事ができるはずです。
2. 代替性があるか?
「その人じゃないとダメ」で、他人に代わってもらうことが認められていない場合、雇用に近いと判断されます。
3. 道具や材料は誰が負担しているか?
パソコン、車両、交通費などを会社がすべて負担している場合、独立した事業者(外注)とは見なされにくくなります。
今すぐできる対策:実態を見直そう
「うちは大丈夫かな?」と少しでも不安になったら、すぐに契約内容と勤務実態を見直してください。
形式的に請求書をもらっているだけでは不十分です。真に独立した事業者として扱っているか、指揮命令系統はどうなっているか、一度クリアに整理しましょう。判断が難しい場合は、自己判断せず、必ず私たち税理士にご相談ください。「知らなかった」で済ませるには、リスクがあまりにも大きすぎます。
正しい税務知識は、会社を守る最強の盾です。曖昧な処理をなくし、盤石な経営基盤を作っていきましょう!