確定申告シーズンが近づくと、「格安で申告しますよ」といった声を耳にすることが増えるかもしれません。しかし、その申し出、本当に信頼できますか?
もし、その人が「税理士」の資格を持っていない「ニセ税理士」だったら…。あなたは気づかぬうちに「脱税」の片棒を担がされ、高額な「追徴課税(ついちょうかぜい)」という痛いペナルティを受けることになるかもしれません。
「税理士の独占業務」という絶対ルール
まず、大前提として知っておいてほしいことがあります。「税理士」は国家資格であり、税理士会に登録している専門家です。
そして、以下の3つの業務は、法律によって「税理士だけ」に許された独占業務(どくせんぎょうむ)と定められています。
- 税務代理:あなたに代わって税務署に申告・申請を行うこと。税務調査の立会いも含まれます。
- 税務書類の作成:あなたに代わって確定申告書や届出書などを作成すること。
- 税務相談:「この経費は認められる?」といった税金の具体的な計算や法律の解釈に関する相談に応じること。
これらの業務を、税理士の資格がない人が「有料で」行うことは、明確な法律違反(税理士法違反)です。「コンサルタント」や「経理のプロ」と名乗っていても、これらの業務を行うことはできません。
なぜニセ税理士が危険なのか?
ニセ税理士に依頼する最大のリスクは、申告内容にミスがあった場合、その責任のすべてが「あなた(経営者・納税者)」に降りかかることです。
税務調査などで申告漏れや計算ミスが発覚した際に、本来納めるべきだった税金に加えて、ペナルティとして追加で課される税金のこと。「過少申告加算税」や、悪質な場合に課される重い「重加算税(じゅうかさんぜい)」などがあります。
正規の税理士は、申告書に「税理士の署名」を行います。これは「私が専門家としてこの内容をチェックし、責任を持ちます」という証です。もし税理士のミスで追徴課税が発生した場合、税理士が賠償責任を負うこともあります。
しかし、ニセ税理士は署名ができません。問題が発覚しても「言われた通りにやっただけ」「知らなかった」と責任逃れをされ、あなたは高額なペナルティと税務署からの信頼失墜という二重の打撃を受けるのです。
本物の税理士を見分ける「2つのチェック」
「じゃあ、どうやって見分ければいいの?」という不安な声が聞こえてきそうです。方法は簡単です。怪しいと思ったら、以下の2つをチェックしてください。
1. 「税理士証票(しょうひょう)」を見せてもらう
本物の税理士は、必ず顔写真と登録番号が入ったカード型の「税理士証票」を携帯しています。名刺に「税理士」と書いてあっても、この証票の提示を求められて渋るようなら、まず怪しいでしょう。
2. 税理士会のサイトで「検索」する
これが一番確実です。日本税理士会連合会の公式サイトには、全国の税理士を検索できるシステムがあります。ここで名前を検索して、ヒットしなければ、その人は(少なくとも現役の)税理士ではありません。
最近では、インボイス制度や電子帳簿保存法など、税務のルールは毎年複雑化しています。ニセ税理士は、こうした最新の改正に正しく対応できる知識もアップデートされていません。
確定申告は、あなたの事業の「健康診断」であり、一年間の「通知表」です。目先の「安さ」だけに飛びついて、未来に大きなリスクを抱え込むのはもうやめにしましょう。
あなたの事業と財産を本気で守れるのは、責任感を持った「本物の」税理士だけです。信頼できるパートナーを見つけ、安心して事業成長に集中できる環境を整えていきましょう!