インボイス制度が始まってから、多くの事業者様を救ってきた「2割特例」。消費税の納付額を売上の預かり消費税の2割に抑えられるこの強力な制度ですが、実は適用期限が迫っていることにお気づきでしょうか?
2025年も終わりに近づき、来たる確定申告シーズンに向けて準備を進めている方も多いはず。「今年も2割特例で楽々申告!」と考えているあなた、ちょっと待ってください。実は、制度の期限だけでなく、「売上の増加」によって不意打ちで特例が使えなくなるケースが多発しているのです。
そもそも「2割特例」はいつまで?
結論から申し上げます。「2割特例」が使えるのは、令和8年(2026年)9月30日の属する課税期間までです。
個人事業主(1月〜12月決算)の方であれば、2026年分の確定申告(2027年提出)がラストチャンスとなります。つまり、今回の2025年分を含めてあと2回しか使えません。
「まだあと2回あるなら余裕じゃん!」と思いましたか? ここに大きな落とし穴があります。制度自体は続いていても、あなた自身の状況が変わったことで、今回から突然使えなくなる可能性があるのです。
最大の落とし穴!「2年前の売上」が1,000万円超え
2割特例は、あくまで「インボイス制度を機に課税事業者になった人(=本来なら免税事業者でいられたはずの人)」を救済するための制度です。
つまり、「インボイス登録に関係なく、そもそも消費税を払う義務がある人」は対象外なのです。
消費税の納税義務があるかどうかを判定する期間のことです。個人事業主の場合は「2年前(前々年)」を指します。ここの課税売上高が1,000万円を超えていると、強制的に消費税の納税義務が発生します。
チャットのAさんのように、2023年(基準期間)の課税売上高が1,000万円を超えている場合、2025年は「本来の課税事業者」となります。したがって、2割特例の適用要件から外れてしまうのです。
この場合、「本則課税(原則課税)」か、事前に届出をしていれば「簡易課税」で計算することになりますが、準備をしていないと税額が跳ね上がり、資金繰りに直撃します。
2割特例終了後の世界を見据えよう
2割特例が使えなくなる(あるいは制度が終了する)と、税負担や事務負担は確実に増えます。これからの対策として、以下の2点を今すぐ検討してください。
- 簡易課税制度の検討: 業種によっては、本則課税よりも税額を抑えられます。ただし、事前の届出が必要です。
- 経費の見直し: 本則課税になる場合、支払った消費税を差し引くことができるため、領収書の保存やインボイス対応がより一層重要になります。
「自分はまだ大丈夫」と思っていても、売上の変動や制度の期限は待ってくれません。特に2026年の制度終了を見据えて、今のうちから税理士と一緒にシミュレーションをしておくことが、事業を長く続けるための「守り」になります。不安な方は、年が明ける前にぜひ一度ご相談ください!