インボイス制度がスタートし、「取引先がインボイスに登録してくれない!」と慌てている経営者の方はいませんか?
支払い先が未登録(免税事業者)の場合、あなたの会社の消費税の納税額が増えてしまう可能性があります。しかし、実はその影響は「すべての会社」に出るわけではありません。
カギとなるのは、あなたの会社がどの「消費税の計算方式」を選んでいるか。今回は、この計算方式別に、未登録の取引先への支払いがどう影響するのか、ハッキリ解説していきます!
大前提:「仕入税額控除」って何だっけ?
インボイス制度がなぜ大騒ぎになっているかというと、すべてはこの「仕入税額控除(しいれぜいがくこうじょ)」のためです。
これは、消費税の納税額を計算するときに、「売上で預かった消費税」から「仕入や経費で支払った消費税」を差し引くルールのことです。この「差し引く権利」がないと、支払った消費税がムダになり、納税額が激増してしまいます。インボイス(適格請求書)は、この「仕入税額控除」を受けるための「通行手形」のようなものです。
つまり、「インボイス未登録の事業者(免税事業者)への支払い」は、原則として、この「仕入税額控除」が使えなくなる(=納税額が増える)ことを意味します。…しかし、本当にそうでしょうか?
あなたの会社はどれ?納税方式別・3つのケース
消費税の計算方法は、大きく分けて3つあります。自分がどれに当てはまるか確認してみてください。
ケース1:「原則課税」の事業者
その名の通り、最もベーシックな計算方法。「売上の消費税」から「仕入・経費の消費税」をガチンコで差し引いて納税額を計算します。インボイスの「仕入税額控除」がフルに影響する方式です。
この方式を選んでいるあなたは、最も影響を受けます。
取引先が未登録の場合、原則「仕入税額控除」ができません。ただし、影響が大きすぎるため、期間限定の「経過措置(けいかそち)」が設けられています。
- ~2026年9月30日まで:未登録先への支払いでも、80%は控除OK
- ~2029年9月30日まで:未登録先への支払いでも、50%は控除OK
- 2029年10月1日以降:一切控除不可(0%)
今は80%控除できますが、将来的に負担が増えることは覚悟しておく必要があります。
ケース2:「簡易課税」の事業者
「計算が面倒!」という中小企業(※基準期間の売上が5,000万円以下)のための簡便な方法。売上の消費税に、業種ごとの「みなし仕入率」を掛けて、ざっくり納税額を計算します。
この方式を選んでいるあなた。結論から言うと、取引先の登録状況は一切関係ありません!
なぜなら、簡易課税は「実際の経費」ではなく「売上」をベースに計算するから。仕入先がインボイス登録していようがいまいが、あなたの納税額は1円も変わりません。Bさんとの取引も今まで通りで大丈夫です。
ケース3:「2割特例」の事業者
インボイス制度を機に、免税事業者から「あえて課税事業者になった」人向けの、超・激変緩和措置(※2026年9月30日までの期間限定)。なんと納税額は「売上の消費税」のたった2割でOK、という破格の特例です。
この特例を使っているあなたも、結論、取引先の登録状況は一切関係ありません!
理由は簡易課税と同じ。実際の経費に関係なく「売上の2割納税」とルールが決まっているからです。簡易課税より有利になるケースも多いため、対象者はぜひ活用したい制度です。
まとめ:まずは「自社の状況」の確認を!
インボイス制度への対応は、外(取引先)に目を向ける前に、まず内(自社)の状況確認が最優先です。
あなたが「原則課税」なら、経過措置を踏まえつつ、未登録の取引先と今後どうするかを考える必要があります。
あなたが「簡易課税」か「2割特例」なら、取引先が未登録でも、消費税の計算上は何も心配いりません。
「自分がどの方式かわからない」「どの方式を選ぶのが一番トクなの?」——そう思った今が、専門家に相談するベストタイミングです。自社に最適な「守り」の戦略を立てて、変化の大きい時代を乗り切っていきましょう!