タバコ税は、国と地方合わせて年間約2兆円もの巨大な財源です。これは消費税の約1%分に相当する規模であり、国家予算において無視できない存在感を示しています。しかし、健康志向の高まりや度重なる値上げにより、この「安定財源」が揺らいでいます。タバコを吸わない経営者の方も、決して無関係ではありません。なぜなら、タバコ税収が減れば、その穴埋めは「別の税金」や「社会保険料」に回ってくる可能性が高いからです。
今回は、タバコ税の仕組みと、その税収変化が私たち中小企業経営者にどのような影響を及ぼすのか、財務の視点から解説します。
価格の6割が税金?「タバコ税」の正体
コンビニで何気なく目にするタバコですが、実はその価格の約6割が税金で構成されています。これほど税負担率が高い商品は他に類を見ません。
具体的には、「国たばこ税」「地方たばこ税」「たばこ特別税」、そしてこれら全てに課される「消費税」の4重構造になっています。つまり、タバコを買う行為は、商品を買っているというより、「税金を払って、ついでにタバコを受け取っている」と言っても過言ではない状態なのです。
「取りやすいところから取る」の限界点
タバコ税はこれまで、「吸わない人からは文句が出にくい」ため、増税のターゲットになりやすい税金でした。防衛費増額の財源議論でも、真っ先に候補に挙がったのは記憶に新しいでしょう。
しかし、これ以上の安易な増税は、税収確保という意味では限界に来ています。経済学には「ラッファー曲線」のような考え方があり、税率を上げすぎると消費そのものが消滅し、逆に税収が減ってしまうからです。
「税率」と「税収」の関係を示した経済理論です。税率を上げれば当初は税収が増えますが、ある一定のラインを超えると、働く意欲が削がれたり(タバコなら禁煙する人が増えたり)、脱税が増えたりして、かえって税収が減ってしまう現象を指します。
実際に、タバコの販売本数はピーク時(1996年)の半分以下に落ち込んでいます。これまでは度重なる値上げで税収を維持してきましたが、これ以上の値上げは「禁煙」を加速させ、トータルの税収を減らすトリガーになりかねません。
そのツケはどこに回るのか?
では、この2兆円規模の財源が先細りした場合、国はどうするでしょうか。歳出(国の支出)が減らない限り、必ず別の場所から徴収する必要があります。
ターゲットになり得るのは、「消費税」「法人税」、そしてステルス増税の代表格である「社会保険料」です。タバコ税の行方は、喫煙者だけの問題ではなく、私たち経営者のコスト負担に直結する先行指標なのです。
経営者が今すぐ取るべきアクション
税制の変化は、経営環境の変化そのものです。以下の視点を持って、自社の財務を守りましょう。
- ニュースの裏を読む:「タバコ増税」と聞いたら、「他の税金の議論も裏で進んでいるのでは?」と疑うクセをつける。
- 利益率の改善:社会保険料や各種税金の負担増は避けられないトレンドです。薄利多売を見直し、コスト増を吸収できる高付加価値な商品作りを急ぐ。
- 価格転嫁の実行:増税分を自社で被ってはいけません。堂々と価格に転嫁できるブランド力を今のうちに育てておく。
「税金が高い」と嘆くだけでは会社は守れません。国の集金システムがどう変化しようとも、ビクともしない筋肉質な財務体質を作り上げていきましょう。税金の流れを読むことは、未来のキャッシュフローを守ることに他なりません。