秋はノーベル賞の季節。今年も日本人受賞者の素晴らしいニュースが飛び込んできましたね!ところで、あの賞金、実は「非課税」(税金がかからない)だってご存知でしたか?
しかし、「賞金=非課税」と早合点してはいけません。経営者や個人事業主の方が受け取る「賞金」や「報奨金」のほとんどは、残念ながら「課税対象」です。この違いを知らないと、確定申告で痛い目にあうかもしれません!
なぜノーベル賞だけが「非課税」なのか?
これは非常に特別な扱いで、所得税法の第9条にハッキリと「ノーベル基金から支出される賞金」は非課税と明記されています。これは、人類への多大な貢献を称えるという、国家的な敬意の表れと言えます。
同じように、オリンピック・パラリンピックで(JOCなどから)受け取る報奨金も、法律(租税特別措置法)によって一定額までは非課税と定められています。しかし、これらはあくまで「超例外」です。
では、私たちが受け取る「賞金」はどうなる?
私たちがビジネスや私生活で受け取る賞金の多くは、原則として「一時所得(いちじしょとく)」という区分で課税されます。
これは、営利目的ではなく、労働の対価でもなく、たまたまラッキーで得た一時的な所得のことです。例えば、懸賞の賞金、競馬や競輪の払戻金(※)、生命保険の一時金(満期金)などが該当します。
(※頻繁かつ高額な場合は「雑所得」になるケースもあります)
一時所得には、最大50万円の「特別控除」というボーナス枠があります。ここが最大のポイントです!
要注意!「一時所得」にならない賞金
50万円控除&半額計算と聞いて「ラッキー!」と思った方、ちょっと待ってください。すべての賞金が一時所得になるわけではありません。ここを間違えると、税務調査で指摘されます。
1. 業務に「直接」関連する賞金
例えば、フリーランスのデザイナーがデザインコンペで得た賞金や、我々のような士業が論文コンテストで得た賞金など、その人の「本業のスキルや知識」を活かして得た賞金は、一時所得にはなりません。
これらは「事業所得」や「雑所得」に該当します。この場合、50万円の特別控除や2分の1計算は使えません。収入がそのまま(経費は引けますが)課税対象となるため、税額は大きく変わってきます。
2. 会社から貰う「報奨金」
経営者の方が、従業員に対して「今月の営業成績トップ賞」や「改善提案の採用賞」として金一封(報奨金)を渡すケースです。
これは従業員にとって「たまたま得たラッキー」ではなく、「仕事(労働)の対価」と見なされます。そのため、所得区分は「給与所得」になります。ボーナス(賞与)と同じ扱いですので、源泉徴収が必要になる点も注意しましょう。
「ラッキーな収入」こそ、申告漏れに注意!
「ノーベル賞は非課税」という話から、身近な賞金の税務まで解説しました。ポイントをまとめます。
- ✔ノーベル賞や五輪は「超例外」と心得る。
- ✔個人が受け取る懸賞や賞金は、まず「一時所得」を疑う。(50万円控除あり)
- ✔本業のスキルで得た賞金は「事業所得・雑所得」。(控除なし)
- ✔会社から貰う報奨金は「給与所得」。(源泉徴収が必要)
特に「一時所得」は、その性質上、税務署が把握しにくいと思われがちですが、支払調書(誰にいくら払ったかを税務署に報告する書類)などを通じて、意外としっかり捕捉されています。「これくらいバレないか」という油断が、数年後の重い追徴課税につながります。
「この賞金、どの所得区分だろう?」と迷ったら、賞金を使う前に、ぜひ私たち税理士にご相談ください。区分一つで納税額が大きく変わることもあります。しっかり確認して、スッキリした気分で喜びを噛みしめましょう!