個人事業主やフリーランスの方で、売上は上がったのに「国民健康保険料(国保料)が高すぎて手残りが少ない!」と悩んでいませんか? 所得が増えれば増えるほど負担が重くなる国保料。この悩みを合法的に、かつ劇的に解決する可能性を秘めた手法が「マイクロ法人」の活用です。
これは、個人事業主とは別に「自分一人(もしくは家族だけ)の小さな会社」を作り、そこから最低限の役員報酬をもらうことで、社会保険(協会けんぽなど)に安い保険料で加入するスキームです。うまく活用すれば、年間数十万円単位での節約も夢ではありません!
ただし、この手法には大きな「落とし穴」があります。今回は、この強力な節税策の仕組みと、絶対に知っておくべき「注意点」を徹底解説します!
なぜ「国保」は高額になりやすいのか?
本題の前に、なぜ個人事業主の社会保険料が高くなりがちかをおさらいしましょう。会社員が加入する「社会保険(健康保険)」は、会社と折半で、かつ保険料計算の元となる給与(標準報酬月額)に上限があります。
一方、個人事業主が加入する「国民健康保険」は、所得(売上から経費を引いた儲け)に連動して保険料が計算され、その上限額が非常に高い(年間100万円を超えることも!)のが特徴です。さらに、全額自己負担です。
高齢化などで社会保障費が増大傾向にある中、特に所得が順調に伸びている事業主さんほど、この国保料の負担が経営を圧迫するケースが増えています。
「マイクロ法人」が解決策になる仕組み
そこで登場するのが「マイクロ法人」です。個人事業主としてのメイン事業はそのまま続けつつ、別で小さな会社(合同会社や株式会社)を設立します。
重要なのは、そのマイクロ法人からも「役員報酬」をもらうことです。例えば、法人の事業(資産管理や事務代行など)に対する報酬として、月額5万円だけを設定します。
法人の役員は、報酬がゼロでない限り社会保険への加入が義務です。この「月額5万円」に対して社会保険料(健康保険+厚生年金)がかかるため、所得連動で高額だった国保料に比べて、負担を最小限に抑えることができるのです。もちろん、国民年金から厚生年金に変わるというメリットもあります。
【最重要】絶対に守るべき「注意点」
「それなら今すぐやる!」と思った方、ちょっと待ってください! このスキームには致命的な「注意点」があり、これを無視すると税務署や年金事務所から「待った」がかかります。
1. 「事業実態」がなければ即アウト!
最大の注意点は、設立したマイクロ法人に「ちゃんとした事業の実態があるか?」ということです。社会保険料を安くするためだけに見せかけの会社(ペーパーカンパニー)を作ったと判断されると、すべてが水の泡です。
このスキームが「否認(ひにん)」された場合、過去に遡って高額な国保料の支払いを求められるなど、最悪の事態になりかねません。
税務署や年金事務所が、「その会社の設立や取引は、実態がなく、単なる税金・社会保険料逃れが目的だ」と判断することです。否認されると、その節税効果は認められず、本来払うべきだった金額に加えて、ペナルティ(延滞税など)が課されることもあります。
2. 個人事業と法人の事業を「明確に分ける」
否認されないためには、「個人事業主としての事業」と「マイクロ法人の事業」を明確に区分する必要があります。
例えば、個人事業で「WEBデザイン(メインの売上)」を行い、マイクロ法人で「個人事業の経理事務代行」「WEBサイトの保守管理」を行う、といった形です。そして、法人が行った業務の対価として、個人事業から法人へ「業務委託費」などを支払い、法人の売上を立てます。
契約書や請求書、銀行口座も完全に分け、第三者から見ても「独立した別々の事業体」として運営されている証拠をしっかり残すことが不可欠です。
実行するなら「専門家」との二人三脚が必須
マイクロ法人を活用した社会保険料の節約は、ルールを守れば非常に強力な手法です。しかし、その「ルール」の線引きは非常に曖昧で、業種や事業内容によって「どこまでがセーフか」の判断が異なります。
「自分の場合はどんな事業を法人でやれば実態として認められるか?」「役員報酬はいくらが妥当か?」——これらの戦略を素人判断で決めるのはあまりにも危険です。
法人設立のコストや、赤字でも発生する法人住民税などのデメリットも存在します。ご自身の状況で本当にメリットが出るのか、安全に実行できるのかを、私たち税理士・中小企業診断士のような専門家としっかりシミュレーションしてから、実行に移すようにしてくださいね!