個人事業主として開業したら、避けて通れないのが「確定申告」です。この申告方法には「青色申告」と「白色申告」の2種類がありますが、結論から言うと、事業をやるなら「青色申告」を選ばない手はありません!
なぜなら、青色申告には税金が大幅に安くなる、たくさんの「特典」が用意されているからです。「なんとなく難しそう」と白色申告のままでいると、毎年、知らず知らずのうちに大きな損をしている可能性があります。青色申告の圧倒的なメリットと、導入する際の注意点をズバリ解説します!
青色申告の「3大メリット」を見逃すな!
青色申告のメリットは65万円の控除だけではありません。特に知っておくべき「3大メリット」をご紹介します。
1. 青色申告特別控除(最大65万円)
これが最大のメリットです。事業の利益(所得)から、無条件で最大65万円(※条件により55万円、10万円の場合あり)を差し引くことができます。
シンプルに言うと「差し引く」という意味です。税金は「利益(所得)」に対してかかりますが、その利益を計算する上で、一定の金額を引かせてもらえる制度のこと。控除額が大きいほど、税金の計算対象となる金額が減るので、結果的に税金が安くなります。
例えば、利益が300万円だった場合、白色申告なら300万円全体に税金がかかりますが、青色申告(65万円控除)なら、235万円(300万-65万)に対して税金がかかる計算になります。この差は非常に大きいですよね!
2. 赤字を3年間繰り越せる(純損失の繰越控除)
事業はいつも黒字とは限りません。もし赤字(純損失)が出た場合、その赤字を翌年以降最大3年間、将来の黒字と相殺(そうさい)できます。
例:1年目に100万円の赤字 → 2年目に150万円の黒字。
この場合、2年目の黒字150万円から1年目の赤字100万円を差し引き、2年目の利益を50万円として税金計算ができます。先行投資がかさむ初年度などに、非常に助かる制度です。これは白色申告にはない、青色申告だけの強力なメリットです。
3. 家族への給与を経費にできる(青色事業専従者給与)
生計を一つにする家族(配偶者や15歳以上の親族)に働いてもらい、給与を支払う場合、その給与を全額経費にすることができます(※事前に届出が必要で、仕事内容に見合った妥当な金額である必要があります)。
白色申告の場合、「事業専従者控除」という制度しか使えず、控除できる金額は最大でも86万円(配偶者の場合)と上限が決まっています。家族経営をされている方には、青色申告は必須と言えます。
青色申告の注意点と「今どきの」対策
「こんなにメリットがあるなら、なぜ全員やらないの?」と思いますよね。それには2つの注意点(ハードル)があるからです。
注意点1:事前の届出が必須!
これが一番の注意点です。青色申告を始めたい年の3月15日まで(その年の1月16日以降に新規開業した場合は、開業から2ヶ月以内)に、税務署へ「青色申告承認申請書」を提出しなければなりません。
(2025年11月2日現在)今から申請書を提出すれば、来年(2026年)の所得分から青色申告が適用できます。これは、再来年(2027年)に行う確定申告のことです。来年(2026年)に行う確定申告(2025年分の申告)には間に合いませんが、将来の大きな節税のために、今から動くことが大切です!
注意点2:帳簿付け(複式簿記)の手間
最大のメリットである65万円控除を受けるためには、「複式簿記(ふくしきぼき)」という正規のルールで帳簿をつける必要があります。
お小遣い帳のような単純な「入った・出た」(単式簿記)とは違い、お金の動きを「原因(例:売上が発生)」と「結果(例:現金が増えた)」の両面から記録する方法です。これにより、事業の財産状況(貸借対照表)と経営成績(損益計算書)を正確に把握できます。
「うわ、難しそう…」と感じた方、ご安心ください。現代には強い味方がいます。
それは「会計ソフト(クラウド会計)」です。銀行口座やクレジットカードを連携すれば、AIが取引データを自動で取り込み、「これは通信費ですね」「これは消耗品費ですね」と勘定科目を自動で提案してくれます。複式簿記の知識がゼロに近くても、指示に従って操作するだけで、青色申告に必要な書類がほぼ完成してしまう時代です。
2023年10月からインボイス制度が始まり、消費税の計算のために、どちらにせよ詳細な記帳が必要になった方も多いはずです。どうせ手間をかけるなら、青色申告にして節税メリットもガッチリ受け取った方が圧倒的にお得です!
「難しそう」という食わず嫌いで白色申告を続けるのは、毎年数十万円を捨てているのと同じかもしれません。節税は、早く始めた人が一番得をします。来年からの青色申告デビューに向けて、まずは「青色申告承認申請書」の提出から始めてみませんか?