「朝起きたら、自分の証券口座で勝手に大量の株取引がされていた…」そんな悪夢のような話が、昨年(令和7年)から急増しています。いわゆるフィッシング詐欺などによる不正アクセス被害です。
お金が盗まれるのも怖いですが、さらに恐ろしいのは「勝手に行われた取引の税金はどうなるのか?」という問題です。結論から言うと、利用している証券会社の対応(原状回復するかどうか)によって、税金がかかる場合とかからない場合に分かれることが判明しました。
被害額7,300億円!?狙いは「株価吊り上げ」
昨今横行しているこの手口、単にお金を盗むだけではありません。犯人の狙いは、他人の口座を乗っ取って特定の銘柄を売買し、株価を不正に吊り上げて利益を得ることにあるようです。被害総額は約7,300億円にも達すると言われています。
もしあなたが被害に遭った場合、税務上の運命は「口座を元の状態に戻してもらえるか(原状回復)」にかかっています。
- パターン①:原状回復あり(大手証券会社などに多い)
- パターン②:原状回復なし(一部のネット証券など)
この2つのパターンの違いが、あなたの財布を直撃します。
【パターン①】原状回復してくれる場合:税金は「なし」
実店舗がある大手証券会社などで見られる対応です。不正取引が行われる前の状態に口座を「巻き戻して」くれます。
この場合、不正に行われた取引は「なかったこと」になるため、当然ながら損益は発生しません。したがって、所得税の課税関係も生じず、確定申告の心配もありません。これが一番安心なパターンです。
【パターン②】原状回復しない場合:税金が「発生する」
一方で、ネット証券などを中心に、口座の原状回復を行わないケースがあります。この場合、なんと「通常の取引があったもの」として扱われます。
つまり、犯人が勝手に売買して「利益」が出てしまった場合、その利益に対して所得税(譲渡所得)がかかるのです。「自分がやったわけじゃないのに!」と言いたくなりますが、税務上はシビアです。
「雑損控除」は使えない!でも補償金は非課税
ここが今回の情報の最大の落とし穴です。通常、盗難などで資産に損害を受けた場合は「雑損控除(ざっそんこうじょ)」という救済措置がありますが、今回の不正取引被害は雑損控除の対象外となります。
災害や盗難、横領によって資産に損害を受けた時に、一定の金額を所得から差し引ける(税金を安くできる)制度のこと。ただし、「詐欺」や「恐喝」による被害は対象外とされています。
ただし、救いもあります。原状回復を行わない証券会社から「補償金」が支払われる場合、このお金は「損害賠償金」のような性質を持つため、所得税はかかりません(非課税)。
自分の身は自分で守る!今すぐできる対策
今回の税務上の取扱いは、被害者にとっては非常に厳しい側面もあります。だからこそ、被害に遭わないための「予防」が何より重要です。
1. 2段階認証は「絶対」に設定する
面倒くさがらずに、必ず設定してください。これだけで不正アクセスのリスクは激減します。
2. パスワードの使い回しをやめる
他のサイトから流出したパスワードリスト型攻撃が主流です。証券会社のパスワードは独自の強固なものにしましょう。
3. 「もしも」の時の証券会社の対応を確認
これから証券口座を開設する場合、あるいは現在の口座について、「不正取引被害時の補償内容」や「原状回復の有無」を規約等で確認しておくことも、一つのリスク管理と言えるでしょう。
もし不幸にも被害に遭ってしまった場合、あるいは「これって税金どうなるの?」と不安に思った場合は、自己判断せず、すぐに私たち専門家にご相談ください。複雑な状況だからこそ、正確な判断があなたの資産を守ります。