結論からお伝えします。健康維持のための費用(健康診断や予防接種)は、原則として医療費控除の対象外です。ただし、例外はあります!特に、コロナ禍以降、インフルエンザや帯状疱疹など「予防」の重要性が増している中で、この税制上のルールを知らないと、せっかくの出費が控除の恩恵を受けられず損をしてしまいます。
健康診断やワクチンの費用を「医療費控除」の対象にするための、たった一つの重要なルールと、代わりとなる特例を解説します。
原則:予防はNG、治療はOKの境界線
医療費控除は、病気の「治療」や「出産」にかかった費用を対象とする制度です。予防を目的とした費用は、基本的に対象外となります。
- 健康診断・人間ドック: 原則NG(病気の有無をチェックする「予防」のため)
- インフルエンザ等のワクチン接種: 原則NG(病気を「予防」するため)
- 美容目的の歯科矯正や治療: 原則NG(治療に該当しないため)
しかし、例外は以下の通りです。この例外に該当するかどうかが、税金を戻せるかどうかのカギとなります。
【重要】例外のルール:「診断結果」がポイント
健康診断の結果、「重大な疾病が発見され、かつ、引き続きその治療を行った場合」は、その健康診断費用も医療費控除の対象に含めることができます。つまり、「予防」が「治療」の入り口となった場合に限ってOKとなるのです。この「治療」は、診断から概ね5年以内に開始されている必要があります。
セルフメディケーション税制という「裏技」
先ほどの会話で出たように、予防費用を控除する「裏技」とも言えるのが、「セルフメディケーション税制」です。
医療費控除の特例の一つで、健康の維持増進及び疾病の予防への取り組みとして、**特定健康診査や予防接種**などを受けている人が、**OTC医薬品(薬局などで買える市販薬)**を年間12,000円を超えて購入した場合、その超過額(上限88,000円)が所得控除される制度です。
この特例を受けるための**適用要件**の一つに、「健康診断」や「予防接種(ワクチン)」を受けていることが含まれています。つまり、**健康診断やワクチン代そのものは控除できなくても、それを受けていれば市販薬の購入費用が控除できる**という仕組みです。特に最近は、帯状疱疹や新型コロナウイルスのワクチン接種費用について、自治体によっては公費負担がなくなり自己負担となるケースが増えていますよね。これらの出費を無駄にしないためにも、この特例の活用を忘れないでください!
活用するための3つの鉄則
この二つの制度を最大限活用するために、今からできる3つの行動をお伝えします。
- 1.予防接種・健診の領収書は必ず保管!
セルフメディケーション税制の適用要件を満たした証明書として必要になります。 - 2.OTC医薬品の購入レシートは「Sマーク」をチェック!
控除対象となる医薬品には目印(レシートに★やSなど)が付いています。購入時に意識して集めましょう。 - 3.家族全員の費用を合算して控除額を大きく!
医療費控除、セルフメディケーション税制ともに、生計を一にする親族の費用を全て合算できます。ご家族全員の分を漏れなく集計しましょう。
「病気にならない体づくり」への投資は、最高の経営戦略の一つです。その投資にかかった費用を少しでも取り戻すために、税制を賢く使いこなしましょう。計算方法や、控除の適用判定に迷ったら、いつでも私たちプロにご相談ください。皆さんの元気な経営をサポートします!