ついに動き出しました。令和8年度(2026年度)の税制改正議論において、私たちの手取りに直結する「基礎控除」を、物価に合わせて2年ごとに自動で見直すという画期的なルール案が示されました。
物価が上がれば税金の控除額も増える、つまり「インフレになれば減税される」仕組みが導入されようとしています。これは、長らく議論されてきた「年収の壁」問題に対する一つの回答とも言えます。経営者の皆さんにとっても、従業員の給与計算や年末調整に関わる超重要トピックです。
「物価連動」で何が変わるのか?
これまでの税制では、一度決まった控除額(例:基礎控除48万円)は何年も据え置かれるのが当たり前でした。しかし、昨今の急激な物価上昇により、「生活費は上がっているのに、税金の非課税枠が変わらないのは実質増税だ!」という声が高まっていました。
そこで自民党税制調査会で示されたのが、以下の新ルール案です。
- 参照指標:消費者物価指数(CPI・総合)
- 見直し頻度:2年ごと
- 端数処理:1万円単位(わかりやすさ重視)
すべての人に適用される、税金の計算から差し引ける金額のこと。「生きていくために最低限必要なコストには税金をかけない」という考え方に基づいています。この額が上がれば、課税される所得が減るため、結果として税金が安く(手取りが増加)なります。
このルール変更は、基礎控除だけでなく、給与所得者にとって重要な「給与所得控除」の最低保障額にも同様に適用される方針です。
経営者・実務担当者が押さえるべきポイント
私たち実務家や経営者にとって重要なのは、「いつ、どう対応するか」です。今回の大綱案では、見直しのタイミングについて現実的な落としどころが探られています。
1. 「年末調整」で調整する可能性
見直しが行われる初年度については、毎月の源泉徴収税額表を変更するのではなく、年末調整で一括して調整する案が出ています。これにより、年の途中でのシステム改修といった大混乱を避けられます。
2. 端数は「1万円単位」
計算結果が「48万3,200円」のようになると計算ミスのもとです。ここを「48万円」や「49万円」のように1万円単位で丸めることで、わかりやすさと計算しやすさを担保しています。
3. 給与計算システムへの影響
2年ごとの改定となれば、当然お使いの給与計算ソフトやクラウドサービスのアップデートが必要になります。令和8年(2026年)からの適用を目指しているため、システム会社からの案内を今のうちから気にしておく必要があります。
背景には、昨今の歴史的な物価高に加え、「年収103万円の壁」を巡る国民的な議論があります。基礎控除を引き上げることで、実質的に「壁」のラインを押し上げ、働き控えを解消したいという狙いがあります。
変化を先取りし、強い組織へ
今回の「物価連動型」へのシフトは、日本の税制において歴史的な転換点と言えます。デフレ時代には必要なかった仕組みが、インフレ時代に合わせてアップデートされようとしているのです。
経営者の皆様にとっては、制度変更への対応という手間は増えますが、従業員さんの手取りが増えることは、モチベーションアップや採用力強化にもつながるポジティブなニュースです。
正式な決定はこれからですが、流れは確実に「変化」へ向かっています。「また税金が変わるのか…」と嘆くのではなく、「従業員のためにどんな説明ができるか」「システム対応はどうするか」を早めに準備しておきましょう。
詳細なシミュレーションや、自社の給与体系への影響が気になる方は、ぜひ私たち専門家にご相談ください。一緒に、変化に強い会社を作っていきましょう!