年末の一大イベントといえば、会社の忘年会。特に盛り上がるのが「ビンゴ大会」ですが、ここで社長が張り切って用意した豪華すぎる景品が、思わぬ税金トラブルを引き起こす可能性があります。
実は、景品の内容や金額によっては、福利厚生費として経費計上できず、受け取った社員への「給与」として課税されてしまうのです。せっかくのプレゼントで社員の手取りを減らさないために、必ず知っておくべきルールを解説します。
「福利厚生」と「給与」の境界線
忘年会の費用は、全社員を対象にするなどの要件を満たせば、原則として「福利厚生費」として会社の経費になります。しかし、ビンゴ大会の景品については、税務署のチェックが厳しくなるポイントです。
なぜなら、特定の人だけが高額な資産を受け取ることは、実質的にボーナス(賞与)を渡しているのと同じとみなされるからです。これが「現物給与(げんぶつきゅうよ)」という考え方です。
アウトにならないための「2つの基準」
では、どこまでがセーフで、どこからがアウトなのでしょうか。明確な金額の線引きは法律に書かれていませんが、実務上は以下の2点が判断基準になります。
1. 社会通念上相当な金額であること
少し難しい言葉ですが、要するに「世間一般の常識の範囲内か?」ということです。
法律用語でよく使われますが、「常識的に考えて」「一般的には」という意味です。例えば、忘年会の景品で100万円の車を用意したら、さすがに「ただのイベント景品」とは言えませんよね?これは常識を超えている=給与だ、と判断されます。
一般的には、景品単体の価格が数万円〜高くても10万円以下であれば、目くじらを立てられることは少ないでしょう。しかし、あまりに高額なブランド品や貴金属は避けたほうが無難です。
2. 現金や金券ではないこと
ここが最大の落とし穴です。以下のものは、金額にかかわらず原則として給与課税されます。
- 現金(ご祝儀含む)
- 商品券、ギフトカード(Amazonギフト券など含む)
- 旅行券、ビール券
これらは「換金性」が高く、実質的にお金を渡しているのと同じだからです。社員のためを思って渡した商品券が原因で、後から源泉所得税の徴収漏れを指摘される……なんて事態は避けたいところです。
どうしても高額商品を渡したいときは?
それでも「創業記念だから豪華にしたい!」という場合もあるでしょう。その場合は、最初から割り切って「賞与(ボーナス)」として処理するのが正解です。
賞与として処理すれば、会社は経費にできますし(役員の場合は事前届出が必要)、源泉徴収もしっかり行うため税務調査で指摘されるリスクもなくなります。社員には「これはボーナス扱いになるから、少し税金引かれるけどごめんね」と説明しておけばトラブルも防げます。
楽しい忘年会を「税務調査の入り口」にしないためにも、景品選びは慎重に行いましょう。「これって経費で落ちる?」と迷ったときは、購入する前にぜひ私たちにご相談ください。