個人事業主からの「法人成り」。いざ会社を作るとなった時、最初にぶつかる壁が「株式会社にするか、合同会社にするか」という問題です。結論から言えば、「将来、人を雇って大きくしたいなら株式会社」「コスト重視で身内だけでやるなら合同会社」が正解です。
最近ではAmazonやAppleの日本法人も「合同会社」であることを知り、「じゃあ安い合同会社でいいじゃん!」と考える方も増えています。しかし、安易な選択は後悔の元。それぞれのメリット・デメリットを、最新のトレンドを交えて徹底解剖します。
最大の違いは「設立コスト」と「信用力」
まず、誰もが気になる「お金」の話です。会社を作るには登録免許税などの法定費用がかかりますが、ここには大きな差があります。
- 株式会社:約20〜25万円(登録免許税15万円+定款認証手数料など)
- 合同会社:約6〜10万円(登録免許税6万円のみ)
初期費用だけで見れば、合同会社の方が約14万円以上もお得です。「定款認証(ていかんにんしょう)」という、公証役場での手続きが不要なのも、スピード設立ができる合同会社の強みです。
会社のルールブックである「定款」が正しく作られているか、公証人(法律のプロ)にチェックしてもらい、お墨付きをもらう手続きのことです。株式会社には必須ですが、合同会社では不要です。
しかし、「安さ」だけで決めてはいけません。そこで重要になるのが「信用力」です。
「誰と」ビジネスをするかで決める
結局のところ、判断基準は「誰に対してビジネスをするか」に尽きます。
株式会社が向いている人
BtoB(対企業)ビジネスが中心で、特に歴史ある大手企業や官公庁と取引したい場合、看板の信用力がモノを言います。また、将来的に従業員を増やしたい場合、求職者(やその親御さん)にとって「株式会社」という響きは依然として安心材料です。
「代表取締役」という肩書きを名乗れるのも株式会社だけです(合同会社は「代表社員」)。名刺交換でのインパクトを重視するならこちらです。
合同会社が向いている人
BtoC(対個人)ビジネス、例えば飲食店、美容室、ITフリーランス、アフィリエイター、不動産投資などは、屋号や店名が重要で、法人格の種類はあまり気にされません。介護事業なども合同会社が増えています。
また、合同会社は「出資者=経営者」なので、株主総会などの形式的な手続きが不要で、スピーディーな意思決定が可能です。身内だけでやるなら、コストも手間も少ない合同会社が最強の選択肢です。
【重要】出口戦略が違う!揉めた時のリスク
設立コストや信用力ばかりに目が行きがちですが、実は「会社を畳む時」や「仲間割れした時」のリスクに大きな違いがあります。
株式会社の場合
「所有(株主)」と「経営(取締役)」が分離しているため、経営方針で揉めても、株主総会の決議で役員を解任したり、株式を買い取ることで解決が可能です。意見が対立しても、ルールに則って会社自体は存続させやすい仕組みになっています。
合同会社の場合
合同会社は「人」の結びつきが強いため、原則として「総社員の同意」がないと定款変更などの重要事項が決められません。もし共同経営者と仲違いして「辞めたい」「辞めさせたい」となった場合、話し合いがこじれると意思決定が完全にストップ(デッドロック)します。
最悪の場合、意見の不一致が原因で「解散・清算」せざるを得なくなるリスクも。設立が簡単な分、終わらせる時や揉めた時の泥沼化リスクは合同会社の方が高いと言えます。この点は、複数人で起業する際に絶対に知っておくべきデメリットです。
将来のビジョンから逆算しよう
後から「合同会社から株式会社へ変更」することも可能ですが、登記費用などでまた20万円近くかかってしまいます。それなら最初から株式会社にしておいた方が無駄がありません。
「とりあえず節税のために法人化するだけ」なら合同会社。
「会社を大きくして上場やM&Aも視野に入れる」なら株式会社。
目先の14万円にとらわれず、5年後、10年後の会社の姿を想像してみてください。あなたのビジネスに最適な「器」を選ぶことが、成功への第一歩です。迷ったら、ご自身の事業計画書を持って、ぜひ一度ご相談ください!