社員旅行は、従業員のモチベーションアップや社内の結束を深める絶好のチャンスです。しかし、「会社のお金で行くから全部経費!」と安易に考えていませんか?実は、ルールを守らないと「福利厚生費」として認められず、社員への「給与(ボーナス)」とみなされて、多額の税金がかかるリスクがあります。
せっかくの楽しい旅行が、後で税務調査のトラブルの種にならないよう、経費として認められるための「境界線」をしっかり押さえておきましょう。
「福利厚生費」と認められるための2つの壁
税務署は、社員旅行が「単なる慰安旅行」なのか、それとも「実質的な給与」なのかを厳しくチェックします。福利厚生費として処理するためには、国税庁が定める以下の2つの要件を両方ともクリアしなければなりません。
- 旅行期間が4泊5日以内であること(海外旅行の場合は、現地での滞在日数が4泊5日以内)
- 参加人数が全従業員の50%以上であること
これらが原則的なルールですが、実は「参加人数50%以上」については、絶対的な基準ではありません。
最近の国税庁の情報の公表では、全従業員を対象に参加者を募集した結果、参加割合が50%未満(38%程度など)になったとしても、旅行の目的や内容が社会通念上一般的であれば、給与として課税しなくても良いという事例が示されました。
ただし、これは「50%未満でも無条件でOK」という意味ではありません。あくまで福利厚生としての実態があるかが総合的に判断されるため、基本的には50%以上の参加を目指すのが安全です。
意外と知らない「豪華すぎる旅行」のリスク
最近は円安や物価高の影響もあり、海外旅行の費用が高騰しています。「たまにはパーッと豪華に!」という社長の気持ちは素晴らしいですが、ここにも落とし穴があります。
たとえ期間や人数の条件を満たしていても、「社会通念上一般的」な範囲を超えて高額な場合は、福利厚生費として認められません。具体的な金額基準はありませんが、1人あたり10万円程度までが安全圏とされ、数十万円を超えるような豪華旅行は否認されるリスクが高まります。
「給与課税」されると何が怖いのか?
「経費にならなくても、給与として経費になるなら同じでは?」と思うかもしれませんが、大違いです。
もし旅行代金が「給与」と認定されると、以下のダブルパンチを受けます。
会社が費用を払っていても、実質的に「個人がお金をもらったのと同じ」とみなされ、その金額に対して所得税や住民税がかかることです。会社は過去に遡って「源泉所得税」を納める義務が発生し、さらに延滞税などのペナルティも課されます。
- 会社側:源泉所得税の徴収漏れとして、追徴課税(ペナルティ)を支払う必要があります。消費税の仕入税額控除も否認されます。
- 社員側:旅行代金分だけ年収が増えたことになり、所得税・住民税が上がります。タダで旅行に行ったつもりが、後で税金を請求されることになります。
トラブルを避けるための3つのポイント
社員旅行を正しく「福利厚生費」にするために、以下の3点は必ず守りましょう。
1. 不参加者に現金を渡さない
これが最も多い失敗です。「旅行に行くか、現金をもらうか」という選択権を与えると、旅行そのものが「現物給与」とみなされます。不参加者にはお土産を買ってくる程度にとどめましょう。
2. 家族同伴は要注意
基本的に、福利厚生費として認められるのは「従業員本人」の分だけです。家族の旅費まで会社が出すと、その分は確実に給与(または役員賞与)になります。家族分は本人に負担してもらうよう、明確に区分けしましょう。
3. 旅行の記録を残す
旅行のパンフレット、日程表、参加者名簿、領収書などは必ず保管してください。「誰が、いつ、どこへ行って、何をしたか」を証明できるようにしておくことが、税務調査対策の基本です。
社員旅行は、ルールさえ守れば会社にとっても社員にとってもメリットの大きい制度です。「うちは大丈夫かな?」と不安になったら、計画段階でぜひ一度ご相談ください。楽しい思い出を、税金トラブルで台無しにしないよう、しっかり準備していきましょう!