「うちの会社は小規模だから、税務調査なんて来ないだろう」…そう思っていませんか? その考えは、もう通用しないかもしれません。なぜなら、税務署は「KSK2」という強力なAI(人工知能)搭載のシステムを使って、効率的に「調査すべき会社」を選び出しているからです。
税務調査は「運」や「勘」で選ばれるのではなく、「データ」によって必然的に選ばれる時代。しかし、このシステムの特性を知れば、過度に恐れる必要はありません。今日は、経営者として知っておくべき「KSK2」の正体と、今すぐ取り組むべき注意点を徹底解説します!
税務署の最強兵器「KSK2」とは?
まず、この「KSK2」が何者なのかを知っておきましょう。
これは「Kokuzei Sougou Kanri(国税総合管理)System」の略で、全国の税務署が保有するあらゆる情報を一元管理する巨大なデータベース・システムです。第2世代(だから”2″)となり、AIによる分析機能が大幅に強化されています。
このKSK2には、皆さんが提出した過去の申告書データはもちろん、取引先から提出された支払調書、銀行の口座情報、不動産の登記情報、国外への送金履歴まで、ありとあらゆるお金に関するデータが集約されています。
さらに、最近のインボイス制度や電子帳簿保存法の導入も、このKSK2に正確なデジタルデータを集めるための施策と言えます。税務署は、皆さんの会社の取引を「丸裸」にするシステムを手に入れたのです。
KSK2はどうやって「怪しい会社」を見つけるのか?
KSK2の恐ろしさは、その分析能力にあります。このシステムは、集めた膨大なデータをAIで分析し、「異常値」を示している会社を自動でピックアップアップします。
- 同業他社と比べて、売上原価率や経費率が異常に高い(低い)
- 売上は横ばいなのに、特定の経費(外注費、接待交際費など)だけが急増している
- 社長個人や家族の口座に、会社から不自然な入金がある
- インボイス登録番号が存在しない相手への、高額な支払いがある
税務調査官は、調査に来る前にこのKSK2の分析結果を見て、「この会社は、この項目が怪しい」と完全に狙いを定めてからやって来ます。もはや「ちょっと帳簿を見せてください」という時代ではないのです。
KSK2時代を乗り切る!経営者の「3つの防衛策」
KSK2は強力ですが、決して万能ではありません。弱点もあります。それは、「データに現れない経営判断の意図」や「取引の具体的な実態」までは読み取れないことです。
そこが狙い目です。税務調査で慌てないために、今すぐ取り組むべき3つの注意点(防衛策)をお伝えします。
1. 「異常値」を自ら把握し、説明資料を整備する
税務署に「異常だ」と指摘される前に、自社の数字を把握しましょう。「なぜ、今年は交際費が増えたのか?」「なぜ、この外注費は高額なのか?」これらに即答できますか?
KSK2がアラートを出しそうな項目(=前年や同業他社と比べて大きく違う数字)について、「それは●●という理由で、戦略的に投資したからだ」と説明できる証拠(稟議書、契約書、会議の議事録など)を、会計データとセットで保存しておきましょう。
2. 「アナログな証拠」こそ最強の武器と知る
KSK2はデジタルデータには強いですが、アナログな実態把握は苦手です。例えば、接待交際費を使ったなら、領収書の裏に「いつ、誰と、何の目的で会食したか」をメモしておく。たったこれだけでも、「個人的な飲食ではなく、売上獲得のための会議費だ」と主張できる強力な証拠になります。
3. 電子帳簿保存法への対応を「防御」と捉える
「面倒だ」と思われがちな電子帳簿保存法への対応。しかしこれは、KSK2時代において最強の防衛策になります。請求書や領収書データをルール通りに保存・整理しておくことは、そのまま「取引の実態」を証明する資料庫(データベース)を作る作業と同じです。
データが整理されていれば、税務署も「この会社はしっかり管理している」と判断し、深掘りされにくくなります。
KSK2は「隠していること」「説明できないこと」を見抜くシステムです。逆に言えば、すべての取引を「正しく説明できる状態」にしておけば、何も恐れることはありません。
日々の地道な証拠の整理と、数字への意識。それこそが、未来の税務調査から会社を守る一番の近道です。KSK2にアラートを出される前に、いつでも胸を張って「説明できる体制」を一緒に作っていきましょう!