働きながら年金を受け取っているシニア層、そしてそうしたシニア層を雇用する経営者の皆様へ。令和9年分の所得税から、給与と年金の「ダブル受給者」に対する税金計算のルールが厳しくなります。
具体的には、給与収入と年金収入がある方の控除額の合計に「280万円」という上限が設定されるのです。これまで、給与と年金の両方をもらっている人は、それぞれの控除をダブルで適用でき、給与だけをもらっている現役世代に比べて税金が安くなりやすい傾向がありました。この「税の不公平感」を是正する狙いがあります。
なぜ今、上限が設けられるのか?
背景には、「在職老齢年金」の制度見直しが深く関係しています。令和8年4月から、働きながら年金をもらう場合、年金が減額(支給停止)される基準額が、現在の「月51万円」から「月65万円」へと大幅に引き上げられます。
これにより、「たくさん働いても年金が減らなくなった!」と喜ぶシニア層が増え、手取りが増加します。一方で、そのままでは税金の優遇も手厚く受け続けてしまうため、現役世代とのバランスを取るために、今回の「控除の上限設定」がセットで行われることになったのです。
具体的にどう計算されるの?
自営業者には「経費」がありますが、サラリーマンや年金受給者にはありません。そこで、税金を計算するときに収入から自動的に差し引いてよい「みなし経費」のルールのことを指します。この控除額が大きいほど、税金は安くなります。
例えば、65歳以上で「役員報酬(給与)が年900万円」「老齢年金が年200万円」の社長がいたとします。
| 項目 | 改正前 | 改正後(令和9年分~) |
|---|---|---|
| ① 給与所得控除額 | 195万円 | 195万円 |
| ② 公的年金等控除額 | 110万円 | 85万円 (※減額) |
| 合計額(①+②) | 305万円 | 280万円 (上限) |
改正前は、合計305万円を「みなし経費」として差し引けました。しかし改正後は、上限が280万円となるため、はみ出た25万円分は差し引けなくなります。
超過した25万円は「公的年金等控除額」から削られます。つまり、差し引ける経費が減る分だけ、税金がかかる対象(所得)が増えてしまい、結果的に増税となる仕組みです。
経営者が今から取るべきアクション
この改正は令和9年分(2027年分)の所得税からスタートします。対象となるのは、比較的高収入を得ながら年金も受給している方々です。
- 社長自身の「役員報酬」と「年金」の受給バランスをどう再設計するか?
- 手取りの増加と税負担の増加を踏まえ、シニア人材の給与テーブルをどう見直すか?
- 会社の損金(経費)としての報酬額と、個人の税引後キャッシュフローの最大化
税制が変わるタイミングは、単なる「増税のピンチ」ではなく、会社の報酬体系やリタイアメントプランを最新の状態へアップデートする絶好のチャンスでもあります。
いざ改正が始まってから「思っていたより手取りが減った!」と慌てないよう、いまの段階から早めのシミュレーションと対策を進めていきましょう。自社の状況に合わせた最適なバランスを知りたい方は、ぜひお早めにご相談ください!